「オレンジ色が好きなんですか?」とよく聞かれます。

名刺もオレンジ、ネクタイもオレンジ、車いすもオレンジ。出版させて貰った3冊の本の表紙もオレンジです🍊

これだけ身の回りにあるのに、長いあいだ、その理由をうまく答えられずにいました。 

小さな手すりに触れて

2017年、テレビの取材で、通っていた杉の子幼稚園を訪ねる機会がありました。母校訪問ならぬ、母園訪問です。

階段には、子どものための、小さな小さな手すりが残っていました。 

「としくんは、これを使って、階段を上がってたんだよ」


担任だった千草先生が教えてくれました。手すりに触れると、ぐっと胸にこみ上げるものがありました。当時の記憶が、一度に戻ってくるようでした。 

僕らを迎えてくれた幼稚園

幼い頃、僕と弟は、幼稚園にも保育園にも「前例がない」と通園を断られました。通える園が見つからず、障害児施設で幼少期を過ごしました。

何度も何度も断られ、ときには冷たい言葉を浴びせられても、母は諦めませんでした。僕らのために駆け回ってくれた母に、声をかけてくれたのが、園長だった郷田先生でした。 

「ウチに来なさい。あなたの子はきっと大丈夫よ」


その一言で、1994年、杉の子幼稚園への入園が決まりました。

サッカーをしました。プールで泳ぎました。キャンプにも行きました。そして、何度もケガをしました。

それでも、写真の中の僕は笑顔でした。隣にいる父も母も、弟も、一緒に笑っていました。 

ずっと、そこにあった色

そんな日々を思い出しながら園内を見渡すと、手洗い場のタイルも、トイレの壁も、あらゆるものがオレンジ色でした。

驚いた様子の僕を見て、郷田先生が言いました。 

「としくんが来た頃から、ずっとこの色なのよ」


僕が身の回りにオレンジを選ぶようになる、ずっと前から。その色は、幼い僕が過ごす場所にあったのです。

小さな手すりのおかげで、僕は歩き続けることができました。心優しい先生たちのおかげで、楽しいことがたくさんありました。僕が笑顔を覚えた場所は、オレンジ色の光で溢れていました。

僕にとってオレンジは、支えてくれた人たちと、楽しかった時間を思い出す色です。身の回りのオレンジには、たくさんの感謝が重なっています。